東京家庭裁判所 昭和57年(家ロ)5029号 審判 1982年8月23日
申立人 富岡ひさこ
相手方 三橋常子 外三名
主文
被相続人富岡利三(本籍東京都中野区○○×丁目×××番地、最後の住所東京都中野区○○×丁目××番×号、明治××年×月×日生、昭和五二年四月七日死亡)の相続財産のうち別紙遺産目録中二の一の(4)、(6)、(10)、(11)、(21)、(22)、(23)及び(24)記載の貸付信託債権は、仮りに申立人富岡ひさこの取得とする。
理由
本件記録及び当庁昭和五六年(家)第七九七号遺産分割審判事件の記録によると、一応次の事実を認めることができる。
本件当事者間の昭和五六年(家)第七九七号遺産分割審判事件が当庁に係属中である。
被相続人富岡利三(本籍東京都中野区○○×丁目×××番地、最後の住所東京都中野区○○×丁目××番×号)は昭和五二年四月七日死亡し、その相続が開始した。
相続人は、申立人(被相続人の妻)、相手方富岡伸彦(被相続人の長男)、同富岡育彦(被相続人の二男)、同三橋常子(被相続人の長女)及び同江川春子(被相続人の二女)の五名である。
申立人は、相続開始時における被相続人の相続財産は別紙遺産目録記載のとおりであると主張する。これに対し、相手方富岡育彦を除くその余の相手方らはこれを認めており、相手方富岡育彦は少くとも同目録中二の1のうち(16)、(31)、二の2のうち(2)-<4>、(20)-<4>、(20)-<5>、(24)-<2>、(24)-<3>、(24)-<4>、(32)-<1>、(32)-<2>、(35)-<2>、(35)-<4>、(35)-<5>、(42)、(52)ないし(71)、二の3のうち(7)、(10)、(11)、二の4のうち(5)ないし(7)、(10)ないし(12)、(14)ないし(18)及び三を除き、その余の財産が相続財産であることを認めている。
申立人は、被相続人の妻として被相続人と同居し、生計を共にしてきた者であり、七五歳の高齢で無職である。
申立人は、昭和五五年春ころ以降老令福祉年金として二八〇、〇〇〇円を受取るほか他に収入がなく、生活費等の不足を補充するため約三、〇〇〇、〇〇〇円を借り受けている状況にある。
相手方富岡育彦を除くその余の相手方らは、申立人の生活の窮状を救うため、本件仮処分の仮分割により申立人代理人の求める別紙遺産目録二の1の(4)、(6)、(10)、(11)、(21)、(22)、(23)及び(24)記載の貸付信託債権を申立人の取得とすることを希望し、相手方富岡育彦も特に異議がない旨の意向を有している。
以上のとおり、一応認めることができる。
上記の認定事実によると、申立人は被相続人の相続人として被相続人の相続財産について三分の一の法定相続分を有する者であること、申立人の生計を維持するため、遺産の仮分割の仮処分により申立人に相続財産の一部を取得させる緊急の必要性があること、別紙遺産目録中二の1の(4)、(6)、(10)、(11)、(21)、(22)、(23)及び(24)記載の貸付信託債権額は相続財産についての申立人の法定相続分をはるかに下回つていることが認められる。したがつて、被相続人の相続財産のうち別紙遺産目録中二の1の(4)、(6)、(10)、(11)、(21)、(22)、(23)、及び(24)記載の貸付信託債権は、仮りに申立人の取得とするのが相当である。
よつて、主文のとおり審判する。
(家事審判官 猪瀬慎一郎)
別紙目録<省略>